最寄りの市区町村で他の市区町村の戸籍謄本などを入手できる新制度(広域交付)

相続によって故人から相続した遺産(預貯金・不動産など)の名義を変更したり、何らかの事情で家庭裁判所に相続放棄の申述を行ったりするなどの場合。

要求された範囲の戸籍謄本などを漏れなく集め、提出しなければならない。

だが人の戸籍は、結婚、養子縁組、離婚や離縁、転籍や分籍などによって移動する(簡単に言うと、本籍のお引っ越し)。

戸籍謄本などの入手は、もちろん郵送によって行うこともできるが、入手したい戸籍が置かれていた市区町村に個別に請求してゆくことが必要であった。

具体的には、市区町村ごとに請求書をDLして記入し、定額小為替・身分証明書の写し・返信用封筒を添えて郵便で請求する。

早ければ数日で送られてくるが、市区町村によっては届くまでに2週間以上かかることもある。

特に戸籍が頻繁に動いているような場合(例えば何度も離婚して何度も再婚したような場合)、あちこちの市区町村に請求しなければならないため、要求された範囲の戸籍謄本などを漏れなく集めるのはかなり面倒であり長い時間がかかった。

 

 

戸籍法が改正され、令和6年3月1日から新しい制度がスタートした。

「戸籍証明書等の広域交付」という名前である。

要点は次の3つである。

 

① 他の市区町村が本籍地の戸籍謄本なども、最寄りの市区町村でまとめて請求して入手することができるようになった(窓口のみで郵送請求は不可)。

= 西東京市民が、例えば札幌市〇〇区が本籍地である亡き父親の除籍謄本を入手する場合、西東京市役所の窓口に請求して入手することができる。

 

② ただし、①の方法で請求できるのは、戸籍に記載されている本人のほか、その配偶者、直系尊属(=親)、直系卑属(=子など)に限られる。

= 申請人(=わたし)の直系尊属(=親)の戸籍謄本は請求できるが、直系尊属(=親)の兄弟姉妹(=おじ・おば)の戸籍謄本まで広域交付の方法では請求できない。

 

③ 弁護士や司法書士などが仕事で依頼者の戸籍謄本などを集めるとき、この制度を使うことはできない。

= 弁護士などの代理人による請求まで認めると、本籍地以外の市区町村の事務負担が増大してパンクしてしまうため。

 

 

詳しくは、「法律のひろば」2024年2月号(Vol.77)の74頁以下に詳しい説明が掲載されている。

いざというとき使える制度である。

まだ始まったばかりの制度であり、知らない人も多いと思うので、アナウンスしておく次第である。