サラ金債務の消滅時効について

法律の専門家でない方は、消滅時効について誤解しておられることがある。

しばらく前に受けた法律相談で、改めてこのことを再認識する出来事があった。

情報提供のため、専門家でない方が誤解しやすい消滅時効のポイントを3つ挙げておく。

① 消滅時効の期間(最後の返済から5年)が過ぎただけでは、サラ金の債務は消えない。さらに「援用」という手続を執って初めてサラ金の債務が時効で消える。

② せっかく時効が完成したのにうっかり債務を(返済)承認してしまうと、消滅時効を主張できることを知らなかったときでも、もはや消滅時効の援用ができなくなってしまう。

③ 大手サラ金でも、債権の時効管理を怠り、うっかり消滅時効にかけてしまう場合がある。

 

先日、法律相談を受けた。

サラ金代理人の弁護士から届いたという、「完済のためのお知らせ」という珍しいタイトルの書面を見せて貰った。

その書面は、おおむね次のような内容であった。

「199×年に貸した債務がまだ7万円くらい残っている。これに利息が積み重なり合計200万円になったぞ。だが内金20万円だけ払ってくれれば完済したことにしてあげる(つまり差額の180万円はチャラ)。この出血大サービス期間は書面が届いたときから1週間以内に20万円を払ってくれたときだけだ。お得ですよ。」

お尋ねしたところ、相談者はお仕事の関係で頻繁に転居を重ね、きちんと住民票を移転していないこともあったとのこと。

また、199×年ころサラ金から生活費の不足分を借りたこと、少し残額があったかもしれないことは事実だが、最後に返済したのは間違いなく2000年ころだったとのことだった。

驚いたのは、その方のご質問が「もう私の債務は消滅時効で消えているのではないですか?」というものではなかったという点である。

「この書面の提案を受け容れ、20万円を送金して終わりにしたい。20万円を送金すれば、間違いなく差額180万円はチャラになるのだろうか?」というご質問だった。

これに対して私は、上記①ないし③を詳しく説明したうえで消滅時効の援用を行うことをお勧めし、送付する援用書面の文案もその場で作ってお渡しした。

たしかに、不確定効果説を前提とする限り、サラ金代理人の弁護士の書面に違法はない。

だが、なんだかな~、素人を嵌めるような書面に名を晒し、プロとしてそれで良いのだろうかと思った。

 

消滅時効という制度は、権利を行使できるのに行使しない状態が長く続いたとき、その権利が消滅することを定めた民法上のルールである。

多くの人は、消滅時効で、自分の債務が消えたとき、そのことを大いに喜ぶことだろう。

だが、事情によって人によっては、消滅時効で自分の債務が消えてしまうという事態を歓迎せず、潔く思わない場合もある。

そのような場合にまで、消滅時効が完成する期間が過ぎたということだけで、消滅時効の効果を無理やり押しつけるわけにもゆかない。

そこで、民法は「援用」という定めを設け(民法145条)、法的安定性の要請と時効利益を享受できる人の意思との間でバランスをとることにした。

つまり、「消滅時効の期間が過ぎました。私は消滅時効で債務が消えるという利益を享受します!」と債権者に伝えた者にだけ、消滅時効の恩恵を与えることにしたのである。

 

もしもサラ金などから古い古い債務について書面が届いたとき。

甘い言葉に誘われてうかつに払ってしまわず、最後の返済から5年以上過ぎているかどうかを振り返り、消滅時効を援用するかどうかを慎重に検討することをお勧めしたい。

 

 

写真は、この秋オープンする「ヨークフーズ保谷店」(西武池袋線保谷駅南口)の様子。

着々と建築工事が進んでいた。

お菓子のコーナーに、関東ではなかなか手に入らない「お握りせんべい」と「カール」が並んでいるかどうか・・・それが最大の関心事である。