投資詐欺被害者の悪徳弁護士による二次被害(?)

去る9月1日、第二東京弁護士会のHPに「国際ロマンス詐欺その他投資詐欺案件の依頼にあたってのご注意」という記事が掲載された。

この記事によれば、投資詐欺被害案件の対応を委任した一部弁護士の対応に関して、第二東京弁護士会の市民相談窓口に数多くの相談(苦情)が寄せられているとのことである。

寄せられている相談(苦情)としては、例えば次のようなものだそうだ。

① 出資金の返還交渉を弁護士に委任して着手金を支払ったが、着手金が高額に過ぎる。
② 弁護士に高額の着手金を支払ったが、事務員が対応するだけで進展がない。
③ 弁護士に委任したあと委任契約の解除を求めたが、応じてもらえない。

これらの相談(苦情)の内容が真実であるとしたら、弁護士が投資詐欺案件の被害者(依頼者)を食い物にしていることになり、誠にゆゆしき事態である。

 

第二東京弁護士会は、「ご注意」を、投資詐欺の被害に遭って弁護士に被害回復を委任するときは十分説明を受けて慎重に検討せよという言い方で締め括っている。

だがこれは回りくどい言い方であり、一般の方が読んでもその真意は伝わらないだろう(ただし、弁護士会側からすると、回りくどい言い方しかできないのもやむを得ない)。

この「ご注意」の肝となるのは、「依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず、・・・」の部分だと思う。

以下、もう少し分かりやすい説明を試みてみる。

 

国際ロマンス詐欺を初めとする投資詐欺の被害に遭い、大金を騙し取られてしまった場合。

詐欺師どもはとても巧妙・狡猾であり、事前に十分に策略を巡らせ、捕まらない&取り返されないためのシフトを確実に敷いたのちに詐欺行為を敢行しているはずである。

被害者が相手にしてゆくのは、このようなとんでもない詐欺師どもである。

そのような被害者において、被害額の回復を実現するには、少なくとも次の3つのハードルを迅速かつ確実に跳び越さなければならない。

【第1ハードル】 詐欺師の特定

⇒ 刑事告訴や損害賠償請求訴訟を提起をするには加害者の特定が不可欠。だが、詐欺師がどこの誰であり、何処にいるのか正確に捕捉すること自体が難しい。

【第2ハードル】 詐欺の立証

⇒ 詐欺だというには、証明力ある証拠により、詐欺の成立要件である「欺罔行為」⇒「錯誤」⇒「因果関係」⇒「処分行為」を立証する必要があるが、簡単ではない(被害者は概してガードが甘く、十分な証拠を持ち合わせていないことが多い)。

【第3ハードル】 差押えが可能な加害者の財産の存在

⇒ 詐欺師を特定し民事訴訟で勝訴判決を得たあと、被害者が調査を行い、差押え可能な加害者の財産を発見しなければならないところ、そのようなものはまず見つからない。

言うまでもなく、これらのハードルを全て跳び越えるのは至難の業であり、その対応を弁護士に委任したとしても、結果はほぼ変わらない。

つまり、国際ロマンス詐欺を初めとする投資詐欺案件の被害回復を弁護士に依頼したとしても、「依頼者の期待する結果」が得られる見込みは限りなくゼロに近い。

 

改めて第二東京弁護士会の「ご注意」に戻る。

前記の解説を踏まえ、もっとストレートな言い方に書き換えてみる。

「国際ロマンス詐欺その他投資詐欺案件の対応を弁護士に頼んでも、まず被害額の回復は期待できません。にもかかわらず、自分に頼めば容易に被害額の回復が図られるかのように語り、多額の弁護士費用を払わせる弁護士がいます。そんな弁護士に関する被害相談(苦情)が市民相談窓口にたくさん持ち込まれています。弁護士会も目を光らせていますが、被害者の方々の側でもお気をつけ下さい。仮に弁護士に対応を頼むときは、まず被害額の回復を図ることが極めて困難であることを覚悟し、僅かな可能性に賭けるくらいの気持ちで弁護士に頼むこと。その際は、被害額を回復できない結末を念頭に置き、空振りという結果に見合う額の弁護士費用に止めておくこと。こんな自己防衛をお勧めします。」 ・・・ たぶんこんな感じだ。

詐欺被害に遭われた方々が、さらに悪徳弁護士による二次被害に遭いませんように!

 

 

写真は、数日前の午前中に撮影した田無駅北口の空。

相変わらず気温は高かったが、上空の空気が入れ替わったのか、秋を予感させる空だった。