不動産の「所有権」の「登記」と「名義」
「不動産」とは土地と建物のことであり、このことは誰でも知っているだろう。
では、「所有権」とは何だろうか?
難しく言うと、物を直接&排他的に支配することができる権利のこと。
簡単に言うと、誰にも邪魔されることなく、その物を煮て食っても焼いて食っても良い権利のことである。
例えば本の所有権を持っているとき、読むこと以外に、枕にしても、囓っても、破り捨てても、トイレットペーパー代わりにしても許される。
これが所有者(オーナー)が持っている所有権という権利である。
ではでは、不動産の所有権についての「登記」や「名義」とは何だろうか?
簡単に説明したい。
不動産を買ったり、貰ったり、相続したりすると、その不動産について所有権を手に入れることになる(所有権を持つオーナーを「所有者」という。)。
ところが、残念ながら所有権というヤツは目に見えないところが厄介だ。
土地に名前は書けないし、建物に表札が掲示されていたとしても、それが所有者の名前なのか借りている人の名前なのか分からない。
土地を買おうとする場合、うっかり所有権を持っていない人から買った場合、その土地の所有権を手に入れることはできない。
無から有は生まれないのである。
そこで偉い人が考え出したのが「登記」という制度。
法務局というお役所に「登記簿」という帳面(電子化されつつある)を用意し、この土地の所有者はAさん、この建物の所有者はBさんという具合いに記録しておく。
法務局に僅かな手数料を支払えば、誰でもその土地や建物に関する「登記簿」の写し(「謄本」という。)の発行を受けることができる。
その「登記簿謄本」を見ると、不動産の所有者が誰であるのかが分かる仕組みになっている。
こんな方法で、目に見えない不動産の所有権のありかを、「登記」という方法で目に見えるようにしているのである。
この「登記簿」には、所有者の名前などが書かれている。
これが俗に言う「名義」と呼ばれているものである。
もとの所有者AさんがBさんに不動産を売ったとき、法務局に申請すれば、その不動産の登記簿はAさんからBさんへと書き換えられる。
世に言う「名義を変更する」という行為である。
つまり、目に見えない不動産の所有権を目に見えるようにしたのが「登記」であり、「登記」に記録された所有者の名前が「名義」ということになる。
その「名義」を変えるのが「名義変更」であり、とりもなおさず、「登記」を新しい所有者の名前に書き換えることである。
例えばじいちゃんが耕していた田舎の田んぼ。
じいちゃんが亡くなって息子が耕すようになり、息子も亡くなって孫が耕すようになっている。
別に人さまに売るわけでもないから、田んぼの名義はずっとじいちゃんのまま・・・(名義を変えるには、お金もかかるし)。
日本全国には、このように所有権が移っても、色々な理由で「登記」が変更されていない(=名義が変えられていない)不動産がたくさんある。
その田んぼは耕作されなくなり、脇を通る国道を拡幅するために役所が田んぼを買上げようとしたとき。
相続に次ぐ相続によって所有者がどんどん増えてしまい(相続人らの共有になるから)、現在の所有者が誰なのかが直ぐには分からない状態になる。
そうなってしまうと、有効に土地を利用しようとしても、簡単に実行することができない。
そんな事態を何とかしなければ!ということで始まったのが、2024年4月1日スタートの「相続登記の義務化」である(詳しくは、2025.1.26付けブログを参照)。
写真は、8年くらい前に事務所を開いたときお祝いにいただいた胡蝶蘭。
今年も2本の花芽が出てきたので、また綺麗な花を咲かせてくれることだろう。