届いた書類はホンモノだろうか?
「こんな書類が届きました。ホンモノでしょうか?」
自治体や弁護士会の法律相談を担当していると、このような相談を受けることがしばしばある。
このところ、2~3ヶ月に一度くらいの頻度で出会っている。相当なものだ。
<ケース①>
「遠方の法律事務所から、全く身に覚えのないアダルトサイト利用料の督促状が届いた。ホンモノだろうか?」との相談。
ニセモノだと即断した。
まず、相談者はアダルトサイトを絶対に利用していないと言っている。
また、督促状の周囲を真っ赤な枠で囲んでおりオドロオドロシイ体裁であるうえ、使っている用語は素人くさい。
しかも、その督促状には、「●月○日までキャンペーン期間です。期間中にお支払いいただければ2割引」と書かれていた。
アホか!弁護士がそんな珍妙な催告書を送る筈がない。
ただ、相談者は法律事務所名の督促状というだけでビビり、夜も眠れない日が何日も続いたとのこと(そうだろうな)。
<ケース②>
「東京地方裁判所と書かれた封筒なのに、なぜか弁護士の名前も書かれている。ホンモノだろうか?」との相談。
不審な箇所のない民事20部(破産部)の封筒であるうえ、併記されている弁護士名は破産管財人を併記した表示だった。
中味の書類(債権者集会の通知、債権届出書、配当金振込口座届出書)も精査したが、特に疑わしい部分はなかった。
たぶんホンモノ。
ただ、実在する裁判所と弁護士名を語る、極めて巧妙なニセモノの可能性もゼロとはいえない。
そこでホンモノの東京地裁民事20部の電話番号を相談者に教え、念のため電話で真偽を確認するよう助言した。
<ケース③>
「東京都内の弁護士から、貸金請求の通知書が届いた。借りている金額が違う。ホンモノだろうか?」との相談。
差出人は、よく知っている法律事務所に在籍している(知らない)弁護士名だった。
また、通知書の内容も、弁護士が書いたと思われるしっかりした支払催告であった。
ただ、精巧なニセモノの可能性もゼロではないので、念のため電話で真偽を確認するよう助言した。
すると、「目が良く見えない。調べるのも苦手。その法律事務所のホンモノの電話番号を教えて欲しい」と頼まれた。
相談者の目の前でスマホを操作して法律事務所のホームページを表示し、そこに書かれている電話番号を相談者に伝えた。
すると相談者曰く「いま先生がご覧になっているホームページ。ニセモノということはありませんか」と問われた。
ぐえっ! た・た・たしかに・・・。
再度日本弁護士連合会のホームページで法律事務所の電話番号を調べ直し、相談者に伝えた。
このやり取りのとき、アンジェラアキの「手紙~拝啓 十五の君へ」という曲が脳ミソの中を駆け巡っていた。
♬ 今 負けそうで 泣きそうで 消えてしまいそうな僕は
誰の言葉を 信じ 歩けばいいの ♬
たしかに詐欺師どもは、裁判所や弁護士の名前を平気で語り、相手をビビらせて金銭をだまし取ろうとする。
何でも疑ってかからなければヤラレテしまいかねない、恐ろしい世の中になってしまっているのが悲しい。
写真は、東久留米駅前のブラックジャック&ピノコの像。
ブラックジャックの切れ味鋭いメスで、ずれてしまった世の中を大手術して欲しい。