法律相談には少なくとも2つのタイプがある?
ある市役所で、月に1回法律相談の当番をしている。
午前10時から午後3時50分まで、1枠30分間×8件の法律相談に対応している。
当番のときいつも思うのは、法律相談には少なくとも2つのタイプがあるのではないかということ。
1つ目は、相続問題とか離婚問題とかという本来的な法律問題の相談を受け、必要な知識を提供したり問題の解決に向けた助言をしたりするというもの。
「狭義の法律相談」と呼ぶと良いかもしれない。
2つ目は、漠然としたお悩みを抱えた相談者のモヤモヤした思考や問題点などを一緒に整理し、スッキリさせるお手伝いをするもの。
例えば、法律問題に辿り着く以前に、次のような点を整理する必要があるケースも少なくない。
・ そのお悩みは法律問題とは呼べないものなのか、それとも法律問題なのか。
・ そのモヤモヤはなぜモヤモヤしており、それを整理するとどんな問題が浮かび上がってきそうか。
・ その問題を解決してゆくためには、どのような順番で、何を、どうしてゆけば良さそうか。
・ その問題の解決を手掛ける最善の専門家や窓口はどこであり、どのようにそこに辿り着けば良いのか。
・ その問題は、いつ頃、どのようなりそうなのか。
このような、まだ法律相談とも呼べないようなモヤモヤをそのまま受け入れ、根気強く一緒にその整理をお手伝いする作業である。
一般の方は、身内が亡くなって「相続」が発生すると、相続=弁護士だ!と考える。
だが必ずしもそうとは限らない。
例えば相続税の申告と納税であれば、相談する相手は税理士さんが相応しいこともある(相続税を扱っている税理士さんは案外少ない)。
また不動産の名義のことであれば、司法書士さんが相応しいこともある。
もちろん最初からその分野の専門家に相談するのが良いのだが、多くの方は知識をお持ちではない。
だから、2つ目のタイプによる法律相談(=交通整理的なよろず相談)には重要な意味がある。
市役所における法律相談は、どの月でも、2つ目のタイプの相談が含まれている。
このような2つ目のタイプの相談に出会ったとき。
「貴方のお悩みは本来の法律問題ではありません。相談する相手が違います」とだけ回答し、冷たくお帰りいただくのは対応としてよろしくない。
どこに、何を尋ねれば良いのか分からない中、よくぞここまで辿り着かれました!と労い、モヤモヤの整理と方向付けの助言をお手伝いすべきだと思う。
自治体や弁護士会などが法律相談の窓口を設けるとき。
しばしば「相続相談」とか「離婚相談」とかと初めからガッチリ枠を設け、間口を狭めてしまうことが少なくない。
こうしてしまうと、自分が抱えている問題は法律問題なのだろうか、相続問題なのだろうかの迷いを生み、最終的に相談を差し控えさせることに繋がってしまう。
弁護士の頭では「相続相談」の範囲は具体的にイメージできているが、一般の方はそうではない。
そのため、例えば「何となく法律相談ぽいかな?と思ったとき相談」といった、ゆる~い看板を掲げることが良いかもしれない。
法律相談とは、純粋な法律問題の解決に向けて相談するだけでなく、その問題が法律相談なのかどうかさえ分からない段階で交通整理を行うために相談することも含まれている。