修理する権利について
法律雑誌NBLの1273号(最新号)35頁。
町野静「修理する権利と日本法の下で問題となる法的論点の検討」を一気に読んだ。
とても興味深い論説だった。
ヨーロッパやアメリカでは、近ごろ「修理する権利」を保証するための立法や法執行が行われているそうだ。
購入した製品が壊れたとき修理できず、新しい製品を購入しなければならない状況が生じる場合。
消費者の選択権を奪い、環境保護にも反することになる。
このような状況を改善するため、消費者の「修理する権利」を法的権利と認め、製造事業者らに修理を容易にする義務や独立修理業者による修理を邪魔立てしない義務などを課す動きである。
詰めて考えると難しい問題も出てくるらしい。
まず知的財産権の問題。
製品を修理するとき製造事業者の特許権、著作権(=プログラム著作権など)、商標権(=商標が付された製品を独立修理業者が修理して商標が付されたまま再販売する場合など)の侵害の有無が問題となり得る。
さらに、製造事業者が独立修理業者による修理を邪魔すると独禁法違反の問題や、修理して再販売された商品の製造物責任は誰が負担するのかという問題なども出てくる。
たしかに色々な問題があるとは思う。
だが樹脂製のShabbyな部品がポキッと折れただけとか、あっという間の交換部品供給終了(製造事業者のエゴだろう)とやらで「まだ使える製品」を捨てなければならない事態は解消して欲しい。
直せるものなら何でも直して使いたい。
例えばドイツ製の圧力鍋。
うちの母ちゃんと結婚した直後に買った品。
どこが壊れても今も全ての部品を入手することができる。
また日本の万年筆会社の顧客対応も素晴しかった。
父から譲り受けた60年くらい前の古い万年筆。
壊れていたので調べて貰うと、すでに部品は製造中止だった。
だがよく似た部品を手作業で加工して直してくれた。
「噂に聞いていた弊社商品の実物を見たのは初めて。大切に保管してくれてありがとう」とのお礼状(もちろん万年筆による手書き)まで付いていた。
物は物にすぎないように見えて、大切に使ってゆくうちに命が宿る。
「修理する権利」・・・日本でも確立させて欲しいな。