他人事ではないインボイス登録事業者の申請

「インボイス制度」(適格請求書等保存方式)が気になっていたので、思い切って正月休みに小冊子などを確認した。

何しろ私はさほど税務に詳しくない弁護士であり、よく分からなかったり不正確だったりするところがある。

だがそれを恐れず、私がザックリと理解した内容を以下に紹介しておきたい。

間違いや不正確な点が多々あると思うので、詳しくは「はざま会計事務所」(小平市花小金井)など税理士さんにご相談いただきたい。

① 個人事業者&法人の両方について、消費税の申告や納税に関わる制度である。どの事業者にも大きな利害関係があるので、決して放置しておいてはいけない!

② 消費税の納税義務を負う事業者(前々事業年度の課税売上高が1000万円超の事業者)は、消費税の額を計算するとき、自分の商品やサービスを準備するとき他の事業者に支払った消費税分(「課税仕入れ等に係る消費税」という)を差引く方法で計算している。これまでは、他の事業者から受け取る請求書がどんな体裁のものでも、その事業者に支払った消費税分を差引くことができた。だが、インボイス制度がスタートする令和5年10月1日以降は、法定の要件を満たした請求書(=「インボイス」(適格請求書))で請求を受けて支払ったものでなければ、仕入税額を差し引くことができなくなる。

③ 上記②をかみ砕いて言うと、(ア)消費税の納税義務を負う事業者に商品やサービスを販売したとき、必ず「インボイスで請求して下さい」と要求されるようになり、(イ)「うちはインボイス登録事業者になっていないからインボイスは出せない」と答えると「そんなの困る。インボイスでなければ、貴方に支払った代金の消費税分を仕入税額として控除できない。その分だけウチが損をしてしまう」とイヤな顔をされ、(ウ)「今後は貴方と取引しない。別の事業者に切り換える」と言われてしまう場面が出てくるリスクがある。

④ 上記③のように取引の打ち切りを通告されないためには、事前に申請して登録事業者になり、「インボイス」(法定の要件を満たした適格請求書)を発行できるようになっておかなければならない。

⑤ インボイス制度のスタートは、令和5年10月1日である。制度開始時から導入するには、原則として令和5年3月31日までにインボイス登録事業者の申請手続を終えておく必要がある。

⑥ インボイス登録事業者の申請は、郵送またはe-Taxで簡単に行うことができる。申請後は、税務署の審査⇒登録通知の発行⇒公表サイトに登録番号を掲示、という流れになる。

⑦ 現時点で消費税の納税義務を負っている事業者は、令和5年3月31日までに申請してインボイス登録事業者になっておく(特に簡易課税の場合、売上げで預かった消費税は「みなし仕入率」を乗じてザックリ計算するので、インボイス登録によるディメリットはない。逆にインボイス登録事業者になっておかないと、取引を打ち切られるリスクを背負う)。

⑧ ここで慎重な検討と対応が必要となるのは、現時点で消費税の納税義務を負っていない免税事業者である。これまでは、自分の商品やサービスを販売するとき購入者から消費税分を加算して支払を受けても、その消費税分を申告・納税しないで済んだ。だがインボイス登録事業者になると、必ず消費税の納税義務者になるので、たとえ課税売上高が1000万円以下であっても新たに消費税の申告と納税をしなければならなくなる。したがって、インボイス登録事業者になっておいた方が得なのか、登録事業者にならず免税事業者のままで居つづけた方が得なのかを慎重に検討し選択する必要がある。

⑨ 上記⑧の検討ポイント3点は、(ア)取引先や得意先との関係、(イ)売上高が減少する可能性、(ウ)新たに納税が必要となる消費税の納税額、と言われている。