相続登記の義務化について(その3・最後)

2025年1月26日付けと4月5日付けのブログで、相続登記の義務化のポイントを簡潔に整理した。

自治体の法律相談などの場でよく質問されるテーマであるため、自分自身の備忘録を兼ねて要点をまとめてみたものである。

今回は3回目である(たぶん最終回)。

 

【相続や登記の案件は誰に相談すれば良いか】

相続や登記の案件について相談する相手は、「弁護士」と「司法書士」が最もふさわしい(相続税については「税理士」)。

多くの場合、「弁護士」と「司法書士」と「税理士」は互いに協力関係を作っている。

例えば弁護士である私が登記が関わる相談を受けたとき。

このケースは司法書士に協力を求めた方が良いと思ったときは、信頼できる司法書士と共同で対応にあたったり、懇意にしている司法書士を紹介したりしている。

また相談者から話を聴いて税金が絡んでくる可能性があると判断したときは、その領域の税務に長けた税理士に連絡をとっている。

なお巷では、弁護士と司法書士でない者が「相続問題を扱います」と宣伝し、費用を貰って相談・助言、書面の作成又は代理行為といった業務を行っている例が見られる。

だが、そのような者に相談した場合には、「安かろう悪かろう」という結果になってしまうことがあるので、くれぐれも注意が必要である

ちなみに私の事務所にも、年間平均で数件くらい、中途半端な知識・技能が原因の明らかな失敗事案について、リカバリーして欲しいとの相談が寄せられることがある。

そのような場合、お気の毒ではあるが「中途半端に人の手垢がついた失敗事案は引き受けない」とはっきり伝え、入口のところでお断りしている(安易に尻拭いを引き受けてしまうと、不当な対応や違法な対応を助長し追認してしまうことになりかねないからである)。

この点について齋藤毅司法書士も、法律雑誌に掲載した「相続登記の申請義務化」(ジュリスト2025年2月号32頁)の中で、次のように指摘しておられる。

「・・・およそ登記の申請書や裁判書類の作成等を業とすることができない者が、売却益等の営利獲得目的で遺産分割その他の相続に関する手続につき助言・介入し、その結果、相続人間における深刻な法的紛争を惹起する等、手続遂行として正当性に疑いの残る事例も仄聞されるところである。」

 

 

【相続人申告登記について】

「相続人申告登記」とは、色々な事情で直ちに相続登記を行うことができない場合に備えて用意された、過料の制裁を免れることができる簡便な方法(=暫定措置)である。

先の齋藤毅司法書士によると、相続人申告登記の申出は「それほど多くない印象を受ける」とのことである。

主な理由は次のとおりである。

① 法務省の通達を見る限り、相続登記を怠った場合に科される過料の制裁は、かなり控え目に運用されそうな雰囲気である。そうであれば、慌てふためいて暫定的な措置である相続人申告登記を行うのではなく、正規の相続登記を目指して実行することの方が多い。

② 相続人申告登記は、申出人・中間相続人の1人について1個ずつ登記簿に付記登記するという方式で行われる。仮に10人が相続人申告登記を行った場合、登記簿に10個もの付記登記がなされる。そのあと正規の相続登記が行われたとしても、すでになされた10個の付記登記は抹消されない。つまり、登記簿がゴチャゴチャで複雑になってしまうということである。

③ 他の共有者が誰もしない状況で相続人申告登記をすると、登記簿上に一人だけ氏名や住所が公表されることになり、悪目立ちしてしまうといったリスクがある。

 

 

<大国魂神社「くらやみ祭」の大太鼓>